《ハーフが読み解く古市発言》これでも「ハーフは劣化が早い」ですか?
Contents
もう2月になってしまいましたが、、、ようやく本年の初投稿!
本年もどうぞよろしくお願いします。
日本は、新年早々、社会学者を名乗る古市氏によるハーフへの差別発言で始まり、ハーフタレントのリーダー格のようなベッキーのスキャンダル。新年早々、メディア上に「ハーフ」というワードがいっぱい踊っていた印象です。
古市氏については、以前のブログエントリーで著書の「保育園義務教育化」のレビューを書いた時に
「ドナルド・トランプなみのレイシスト」
って批判していたので、正直「またか」という諦めに近い気持ちもありつつも、やっぱりハーフの当事者としては傷つきます。
以前のブログはこちら→【本レビュー】古市憲寿著「保育園義務教育化」をハーフの視点で考える
というわけで、今さらながらですが、先日、ツイッターで古市氏の「ハーフは劣化が早い」発言について、ちょこっと思うところをツイートしたので、今回はそれをブログ記事にまとめたいと思います。
古市氏による「ハーフは劣化が早い」発言について、そもそも何が問題だったの!?という疑問に、実際にハーフの人はどう感じたのか、また、ハーフの人にどう影響しうるのかという観点もふまえてお答えしたいと思います。
古市発言とは?
元旦に放送されたフジテレビ系の「ワイドナショーSP」なるテレビ番組で社会学者を名のる古市憲寿氏による「ハーフは劣化が早い」という発言がありました。
共演していたウェンツ瑛士さんの子どもの頃の写真が紹介された流れでの発言。
ウェンツとの掛け合い、ツッコミを入れるためのフリとも見えるけれども。。。
「ウエンツさんのことじゃなくて、でも、一般的になんか、劣化って早くないですか?」
と、たたみかけて発言。
社会学者であろう人が、明確に「ハーフは劣化が早い」と一般化してしましました。
ハーフの人にはどう聞こえた?
「ハーフは劣化が早い」とテレビで言われたわけですが、
この発言、ハーフである私は自分に向けられた言葉に聞こえます。
日本で「ハーフ」と呼ばれて育ってきたので、「ハーフは」と言われたら、当然、私にも向けられた言葉でもあると感じます。
なので私には、
「
って言われている感じがします。
まだ若い/子どものハーフの人には「あなた今はカワイくとも/カッコよくとも、どうせすぐ劣化するんでしょ」って感じでしょうか。
こんなこと言われたら、どう感じますか?
けっこう直球の口撃ですよね?
言った本人からすれば、目の前にいる誰かに直接悪口を言っている訳ではないので、 自分の居心地は悪くならない。けれども、言われたハーフの当事者からすると、一般化されれば、自分は「ハーフだ」と認識している人、「ハーフだ」と過去に言われたことのある人全員に向けられた言葉となるので、ダイレクトに傷つく人が余計に増えるでしょう。
古市氏も、初めは、ウェンツに対して直接言ったかのように受け止められて、居心地が悪かったのか、あえて「一般的になんか」と言い換えています。
ハーフの人への影響は?
「ハーフ」は常にイメージが先行していて、特にアイデンティティの確立過程の子どもや若いハーフは、そのイメージと自分との間で悩むことが多いものです。
ハーフのイメージというと、テレビに出ているモデルやタレントの影響が強く、「容姿が良い」「スタイルが良い」「バイリンガル」「国際的」などポジティブなイメージが多いのですが、このようなポジティブなイメージであっても、ハーフ全般に一般化されると、悩みの種となります。
「ハーフだからキレイでいなくては。。。」「ハーフなのにスタイルが悪い。。。」「ハーフなのにバイリンガルじゃない。。。」「ハーフだから国際的に活躍しないといけない。。。」
などなど、人知れず、見えないプレッシャーと戦っています。
2015年ミスユニバースの日本代表に選ばれた、宮本エリアナさんが以前に、ミスユニバースに参加したきっかけとして、ハーフのイメージと自分とのギャップに悩み自殺してしまった友達がいることをインタビューで話していました。
今回の古市発言はダイレクトにネガティブな内容だったので余計に心配です。年齢の重ね方なんて、人それぞれなのに「ハーフ=劣化が早い」なんてイメージが植えつけられてしまったら、
「ハーフだから自分も劣化が早いと思われているのか。。。」
と新たな悩みの種になるし、不必要に意識するきっかけになってしましまいます。
今まであまり気にも留めていなかったような年を重ねたサインに、
「あ〜ハーフだから劣化してきたって言われちゃうから、どうにかしなきゃ。。。」
なんて考えるようになってしまうのです。
何が「人種差別・レイシズム」なの?
さて、古市発言は「人種差別だ」という声が上がっていましたが、
「ハーフが劣化が早い」発言は「ハーフの人を傷つける発言」というのは直感的に判っても、何が人種差別・レイシズムに当たるの?と疑問に思う人もいるかもしれません。
ある人種のグループを総じて「こういう特色があります」と言う行為がレイシズム(人種主義)として批判の対象となります。
今回の古市発言の場合、根拠もなく、
「ハーフ」が人種なの?と聞かれたら、既存の一般的な人種カテゴリーから考えたら当てはまらないかもしれませんが、日本の中ではほぼ人種カテゴリーと同じ様に機能しているので、人種差別・レイシズムのメカニズムは同じ様に当てはまるでしょう。
古市氏に関しては著書の中でもレイシスト発言していて、
それにしても、
←これね。私は読んでません。
ハーフの外見が劣化するのは主観の問題
今回の件、人種差別・レイシズムと並んで、外見至上主義・ルッキズムの問題も多く指摘されていました。ルッキズムは、人の見た目を持ってその人の価値を定める行為。その人の人柄や性格、能力など中身を見ずして、見た目だけで優劣の判断を下す行為。
今回の古市発言では「劣化」という言葉が使われました。「劣化」は最近では「容姿の衰え」を指す言葉として使われることも多いですが。。。本来は「モノの品質や性能の低下」を表す言葉。人には「劣化」ではなく「老化」という言葉を使うのが正解です。
もし、「劣化」を人に使うのであれば、それは「容姿が劣る=品質や性能が低下した」と容姿の優劣によって人に優劣をつける行為なので、外見至上主義・ルッキズムになるわけです。
さて、この外見問題、私は、
ハーフだって毎年、歳を取るんです!
って声を大にして言いたい。
歳を重ねれば、年齢相応に老化をするのは当たりまえ。ハーフ=不老の薬を手に入れた人たちではありません。
しかし、ハーフというとテレビや雑誌などで活躍する10代〜20代前半のモデルやタレントなど若くてきらびやかな人たちをイメージしがち。そのイメージが強いと、そこから外れた、アラサー以上のハーフの人は「ハーフなのに老けてる=容姿が衰えてる=劣化」となるのでしょう。
そして、もし、ハーフの非日本人的容姿は「老化が早く」見えるというのであれば、それはただ単に、その人の年齢の重ね方の特徴を見慣れていないからという見る側の問題かもしれません。(ハーフ=非日本人的容姿とも限らないのですが。。。)
日本人が欧米圏に行くと、幼く見られることが多いということをよく聞きますよね。
それも同じことで、年の重ね方のサインが自分だとか普段見慣れた人と異なると、「年齢相応」の判断が難しくなるだけではないでしょうか。
「ハーフ」と使うのは問題なの?
一部の記事で、この古市発言に対するツイッターでの発言が言及されていた、東京大学の北田暁大教授は、「ハーフ」
「ハーフ」がためらわれる言葉だからということで、頻繁に登場してくるのが「ダブル」という言い換え。ハーフは英語の「半分」という意味だから、半人前のようでネガティブに聞こえる。せっかく文化も言語の2つ持っているんだから「2倍」の意味の「ダブル」にしましょう。という主張から「ダブル」という呼び名は登場しました。
けれども、私は「
なぜなら、今回の件でも「
そして、ダブルと表現されようが、私は「日本語上手ですね」
というわけで、私は「ダブル」を推奨主義が嫌いなのもあり、あえて「ハーフ」を使い続けています。
人に無配慮に「ハーフ?」って聞かれたら、
ちなみに、北田さんのツイッターでは「ダブルを使いましょう」というところまでは書いていないです。
<北田さんはこういう本を書かれています>
というわけで、今さら感はありますが、私の古市発言にたいする思うところでした。
これでもまだ、「ハーフは劣化が早い」なんて言えますか?