《日本大使館発!TCKイニシアチブ》オバマ大統領も呼ばれているサード・カルチャー・キッズとは?


TCKという言葉を聞いたことはありますか?

 

このほど、ワシントンDCにある日本大使館が、サードカルチャーキッズ(TCK)のための新しい取り組み、「Japan in Your Heart: Third Culture Kids Initiative」を始動させました。

まだまだ、始まったばかりの取り組みで、手探りなところもあるようですが、グローバル家族にとっては、ありがたいコミュニティとなる可能性も秘めています。

 

先日、この取り組みのキックオフ交流イベントに参加してきたので、
まずは第1弾として、この大使館が新たに注目しているサード・カルチャー・キッズって何?
というところを説明していきたいと思います。


そして、第2弾で日本大使館の「Japan in Your Heart: Third Culture Kids Initiative」の取り組みをご紹介します。

 

TCKって何?


TCKはThird Culture Kids(サード・カルチャー・キッズ)の頭文字。

両親の文化(または持っているパスポートの国の文化)とは異なる国で、ある程度の期間育った子どもたちのことを指します。

両親の国の文化を第1文化として、育った国の文化が第2文化。その2つの文化の間で育つことで、独自の第3の文化を身につける、ということからサード・カルチャーつまり、第3文化の子どもたちと名付けられました。

幼少期をインドネシアで過ごしたオバマ大統領も大人になったTCK、アダルト・サード・カルチャー・キッズ(ATCK)としてよく名前が上がる1人ですね。

 

さて、このTCKという名称は1950年代にアメリカの社会学者によって作られましたが、広まり始めたのはずっと最近のようです。

 


こちらの、
「Third Culture Kids: Growing Up Among Worlds」
というのが、サード・カルチャー・キッズについての代表的な本で、
初版が1999年です。その頃から一般に認知されるようになってきたようです。

本の詳細は左の画像をクリックすればアマゾンのページに飛ぶので、そちらで!←手抜きw)

 

 

 

日本語でも
「サードカルチャーキッズ:多文化の間で生きる子どもたち」
というタイトルで2010年に訳書が出版されています。

(同じく、詳細は本の画像をクリックしてアマゾンページで見てください)

 

 

TCKってどんな人たち?

 

両親の国と、育ったホスト国の文化と異なるハイブリットな第3の文化を育むサード・カルチャー・キッズとはどういう子どもたちなのでしょうか。

 

代表的な親の職種4つ


まず、代表的なサード・カルチャー・キッズとして、上の本であげられているのは、親が以下の4つの職業についている子どもたち。

  • 外交官
  • 海外駐在のビジネスマン
  • 軍人
  • 宣教師

これらの職業に就く親の都合で、親の国/パスポートの国とは異なる国で育つ子どもたちがサード・カルチャー・キッズとしてあげられています。

 

親とも現地の文化とも異なる自分

彼/彼女たちは、両親の文化とは異なる現地の文化を身近な文化として接しながら育つため、現地の文化への態度や理解に両親とは違いが出てきます。一方で家の中では親の文化で過ごしていたり、最終的に自国に戻る前提で生活していたりと、完全に現地の文化と一体となっているわけでもありません。

 

長所もあれば苦労するところも

2文化の間で育つことで、他者や他文化に対する理解や寛容さに長けていたり、それゆえにコミュニケーション能力も高くなるというような利点もあるものの、どちらの文化にもはっきりとした所属を感じられず、また、母国に戻った時に、ホームである場所なのに馴染めないという違和感や葛藤とともに生きていたりもします。

 

根無し草の拠り所としてのTCK

ホスト国ではあくまでも外国がらきたよそ者で、自国に帰っても上手に周囲と馴染めずという経験の中で、唯一、同じ様な経験をしたサード・カルチャー・キッズ同士は不思議な親近感や連帯感を感じられるそうです。例え、育った国が異なっていたとしても、「根無し草」的な感覚や経験の共有がお互いを結びつけるそうです。


そのため、TCKというコンセプトは、そのような人たちにとっての新しい拠り所、帰属場所としても機能します。

 


帰国子女との違いは?

TCKは日本では、「海外子女」(現在海外に居住中)や「帰国子女」(海外居住から日本に帰国した人)という呼び方もされますね。上記のTCKの本でも例として日本の海外子女・帰国子女について紹介されています。

ただ、日本語版の訳者の加納ももさんは、サード・カルチャー・キッズと帰国子女の違いについてこのように表現しています。

「TCK」という名前が解放感を与えるのに対して、「帰国子女」というレッテルは非常に限定的な、束縛の強いもの

http://www.3anet.co.jp/general-relation/3rd-culture/97/

「帰国子女」という表現はどちらかというと、日本社会の1文化の中で育った人たちが、ちょっと異質な彼・彼女たちに貼ったラベルでステレオタイプ的なイメージで彼・彼女を理解しようとするために使われる。一方で、TCKはどちらかというと、当事者が自らの経験や感じてきた違和感を説明するための表現のようです。

 

 

CCK、クロス・カルチャー・キッズというのもあるよ

 

TCKとよく一緒に出てくる概念にCCKというのがあります。
こちらはCross Culture Kids(クロス・カルチャー・キッズ)の頭文字で、CCKよりも大きく、全ての多文化間のはざまで生きる子どもたちを包括する概念として使われています。

CCKってどんな子どもたち?

  • 私のようなハーフの人たちのように、家庭内に多文化が共存することで複数の文化の間をクロスして生きる子どもたち
  • 家庭内の文化と生活する社会の文化が異なる移民の子どもたち(最終的に親の出身国に戻るという予定がないためTCKには含まれない)
  • 国境沿いに住んでいることで、日常的に2国・文化を往来して生活する子どもたち
  • 国を越えて養子に出された子どもたち
  • インタナショナルスクールや寄宿学校などで他国の教育制度をとる学校に通う子どもたち

などなど、ありとあらゆるタイプの、複数文化の間を往来する子どもたちがこのカテゴリーには含まれます。

また、TCKもこのCCKというカテゴリーに属する子どもの1つのタイプとして位置します。

 

それぞれのCCKには共通点もあれば相違点もある


CCKは皆、2つ以上の文化の間で育つことで、1つの文化の中だけで育つ人とは異なる経験や、視点をもつという点で共通した部分も多くありますが、しかし、それぞれの立場ごとにことなる特徴や抱える課題もあるという点から、TCKや他のカテゴリーそれぞれで議論することが必要であるとされています。

また、研究がTCKというコンセプトから始まり、後からCCKが出てきたこともあり、TCKの研究を基にCCKへの応用を考えようという立ち位置が強いようです。

そのため、CCKというより包括的んカテゴリーはあれど、この分野の議論がされるときは、TCKの議論が中心となることが多い印象です。

 

TCKが中心を占めることへの疑問点

 

CCKに属しても、TCKには属さないハーフの私としては、正直、TCKの議論において、TCKに固執する理由は何だろうかと疑問に思うところがあります。

TCKにしろ、その他のCCKにしろ、お互いが親近感を抱く理由は、「複数の文化の間を移動して育ってきた」ということ。どのようにそれぞれの文化と接してきたかなど細かい違いがあったとしても、重要なのは、1つの文化しか持たない人には理解されがたい、この微妙な感情ではないでしょうか。

日本では、ミックス・ルーツという括りでハーフ、移民、在日、帰国子女など、様々なCCKの若者がうまく横のつながりを作り始めていた様に感じます。

もちろん、それぞれのカテゴリーで考えることが重要なこともあるかもしれませんが(例えば、ハーフには「日本人なのに日本人としてみてもらえない」というような葛藤があるけれども、それは移民の人と共有するのは難しかったり)、「複数文化の間で育つこと」が軸にあるのであれば、あえて細かい違いを強調せず、横につながることでもたらされる新しい可能性もあるのではないかな、と漠然としていますが、思ったりします。

一つの文化で育つ人たちに理解してもらうことが目的であれば、断然、横でつながり連帯する方が母数も大きくなるし良いのかなと。

 


もっと詳しくTCKについて知りたい方は、こちらの本を手にとってみてくださいね。
アマゾンのページの「なか見!検索」でも導入部分が結構読めますよ〜。

 

第2弾に続く。。。

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