《ハーフコラム》ハーフとオリンピックの4つの疑問に答えます

 

8月21日に、ついに17日間におよんだリオオリンピックが幕を閉じました。

ベイカー茉秋選手が金メダルをとった柔道も楽しかったけど、
終盤の陸上男子の4×100mリレーも大興奮してしまいました。

日本が短距離で銀をとるなんて。
1位のジャマイカも、3位でゴールしたアメリカ(後に失格)も、全選手が100mを9秒台で走る記録を持っている中、日本のメンバーは一人も10秒を切ったことのない選手たち。そんなメンバーが個人の記録で劣る国に、チーム力でこんな記録を出せるなんて、感動しました。

そして、アンカーを走る日本とジャマイカのハーフのケンブリッジ飛鳥選手。
彼がジャマイカのウサイン・ボルト選手に次いでゴールする姿は何度見ても鳥肌もの。

ボルト選手が世界のトップ選手であることはもちろんのこと、ケンブリッジ飛鳥選手にとってはもう一つの母国のスター選手。オリンピックの決勝で、そんな選手の次にゴールするのはきっと色々と思うところがあるんじゃないかな、と勝手に想像してしまいます。

あの時のケンブリッジ選手のスパイクには日の丸とジャマイカの国旗の両方があしらわれていたそうです。

 

さて、ベイカー選手にケンブリッジ選手などハーフの選手の活躍が目立つ昨今ですが、今日は、ハーフとオリンピックにまつわるあれこれを4つの疑問に答える形で考えてみたいと思います。

 

ハーフの選手の活躍が嬉しいのは
日本人が日本の活躍が嬉しいのと同じ?

 

ハーフの選手が登場するとなんだか嬉しくなっちゃう、ハーフな私です。
ハーフの選手が出場するとそれだけで応援したくなってしまいます。

なんなんでしょう、この感覚。
他のハーフの人も同じように感じる人も多いのではないでしょうか。
少なくともうちの夫も同じように、オリンピックではハーフの選手の戦いを注目して追っていました。


さて、このハーフの選手を応援したくなる気持ちは、
日本人が自分の国の代表の活躍に嬉しくなるのと同じ感覚なのでしょうか。

 

オリンピックでは自国の選手の活躍を応援する人がほとんどだと思います。
それと同じようにハーフだから同じハーフを応援したくなるのでしょうか。

ある意味、そうなんだけど、
国を応援するのとハーフの人を応援するのは少し違うと感じています。

自国をを応援するのは、同じ国に帰属しているという帰属意識によると思うのだけど、私たちは「ハーフ」という何かに帰属しているわけではないので、似たような経験を共有していることによる仲間意識のようなものなのかなと思います。

自国の代表選手は自分の国を代表しているわけだけど、ハーフの選手はハーフを代表しているというわけではなく、あくまで日本(または他の国の代表で出場する選手も)の代表なわけです。

それに、同じ「ハーフ」といえど、日本以外のルーツの国はみんな様々。今のところ私と同じインドハーフで目立った活躍をしているスポーツ選手はあまりいなさそう。

 

それでもハーフの選手を自然と応援したくなるのは、今まで日本で体験してきたであろうことが重なるから。日本人なのに、日本語お上手ですねと言われたり、お箸使いを褒められたり、「日本人です」と言うと驚かれたり。。。

ましてや日本代表として出場している彼らは余計に「日本人じゃない」というようなことを言われることが多い。何かにつけて「ハーフだから」と言われてしまう。

そういう発言を見聞きすると、とても他人ごととは思えず、なおさら頑張ってと応援したくなります。

 

国を基準に応援しているわけではないので、柔道のフィリピン代表で出場した中野亨道選手のように、日本育ちのハーフで、もう一方のルーツの国を代表して出場している選手でも応援したくなります。二つの国の間に生きているという感覚も共有しているので。

 

 

ハーフとしての経験を共有しているからという理由に加えて、もう1つ応援したい理由があります。

それは、日本にも私たちのような存在がいるということを世界に示せるから。

日本代表のユニフォームを着たケンブリッジ飛鳥選手が、陸上の決勝でウサイン・ボルト選手の隣で走る姿は少なくなからず、世界中の多くの観戦者を驚かせたのではないでしょうか。

「本当に日本人なの?」と。

日本に限らず、海外に行っても、私のような見た目に出るハーフはなかなか日本人として受け入れてもらえません。

けれどケンブリッジ選手のようなハーフの選手が日本代表としてオリンピックという大舞台で活躍すれば、より多くの人にこういう日本人もいるということを気づいてもらうことができます。

そのためにも、今後ももっともっとハーフの選手が活躍してくれることに期待したいと思います。

 

ハーフはどっちの国を応援するの?

 

さて、オリンピックのような国際大会があるとよく聞かれる、
「どっちの国を応援しているの?」というハーフあるある。

私の場合は、日本かインドかと言われたら、基本的には日本を応援しています。


理由は簡単で、私が触れるメディアが日本のメディア中心だから。

特に日本に住んでいた頃は、オリンピックの前となると、毎日のように日本代表の選手たちがテレビで取り上げあれ、目にする機会が増えるので、自然と日本の選手情報が集まり日本の選手に愛着がわいてきます。なので自然と日本選手を応援しています。

アメリカに来て、メディアに触れるのがネット中心になった今でもやっぱり日本の情報の方が多いのは変わらない模様。私の場合、言語力も英語より日本語の方が強いし、日本生まれ育ちで文化背景も日本の方が圧倒的に強い上、インドにいる親戚も少ないのでインドの選手についての情報が入ってくる理由がほとんどないんです。インドに住むイトコがいたりしたら、フェースブックのタイムラインなんかでインド選手の情報も入ってきたりするんだろうけれど、あいにく移民大一家で、もはやインド人のイトコが一人もいない。。。

なので、アメリカに移住して以降もどちらかというと日本選手を応援しています。

ただ、今回のオリンピックは日本のテレビに触れなくなったうえ、そもそも家にテレビもないので、全体的にオリンピック自体への関心も下がった感じがします。ようやくリオ五輪に興味を持つようになったのは、日本の柔道代表ががんばっている様子をネット記事で読んだあたりから。

 

実は、日本に住む私の母もインド人なのに日本選手を応援しています。
それもやっぱり日々日本のテレビで日本の選手を見ているから。それに日本のテレビ放送で他国の選手の試合を追うのは難しいですからね。

オリンピック期間中に母と電話したら、夜な夜な日本代表の試合を追っかけていたようで、日本代表の結果を熱く語られ、圧倒的に私よりも応援に熱がこもっている様子でした(笑)

 

これがもし、例えばアメリカハーフで、日英のバランスのとれたバイリンガルで両方の国のメディアをそれなりに同量触れている様な人だったらまた違ったかもしれません。

在日中国人とアメリカのミックスで日英バイリンガルの夫の場合は、日本とアメリカ両方のメディアに触れているので、日本の選手もアメリカの選手も両方追いかけている様でした。でもやはり、家にテレビがないので全体的に興味が薄いのは私と一緒なのですが。

 

ところで、私は、インドの選手に全く興味がないわけではないんです。
テレビだとか報道を見ている中でインドの選手が出てくると、やっぱり気になるし、ましてや、インドがメダルを獲ったようなニュースだと嬉しくなります。

そういえば、前に陸上の何かの国際大会の女子リレーの決勝で日本とインドが競り合うシーンがテレビに映し出されたことがあったのですが、その時はインドを応援していました。

日本とインドを比べると、オリンピックなどの国際大会に出場する選手の数も圧倒的に日本の方が多いし、スポーツにかける予算や設備など確実に日本の選手の方が恵まれた環境にあります。

そんな2国が競いあっていて、インドがもしかしたら勝つかも!っていう状況にあると、恵まれない環境の中でも結果を残そうとしているインドの方に応援の熱が入ってしまいます。

そもそも、インドの国際大会の出場人数が少なく、注目する選手が少ないのも、私が基本的に日本を応援している理由なのかも。

 

というわけで、インドと日本どっちを応援するの?問題については、圧倒的にメディアで触れる機会が多く、国際大会の出場人数も多い日本を応援するのが私にとっては自然なようです。
ただ、珍しくインドががんばっているとインドも応援するという感じです。

 

ハーフの選手はどっちの国に出場?

 

同じ日本育ちのハーフでも、ベイカー茉秋選手やケンブリッジ飛鳥選手のように日本代表としてオリンピックに出場したハーフもいれば、中野亨道選手がフィリピン代表として出場したように、日本ではないもう一方のルーツの国を代表するハーフもいます。

 

ハーフは片方の親が日本国籍で、もう一方の親が別の国籍のため、2重国籍を保有している、または両国の国籍を得る権利を持っている可能性が高くあります。

オリンピック憲章を読んでみると、重国籍者が法的に国籍を選択しなければならないなんていう決まりはなく、複数持っている国籍の内、どの国を代表するかは本人が決めることができるとなっています。
(代表する国を変えることについては、前の国の代表として競技してから、基本3年が経過していることという要件があります)

一方、日本の法律では、重国籍者は22歳になるまでにどちらの国籍を選択する必要があります。

したがって、22歳以下の日本の重国籍の選手は、法的に国籍を選択する必要なく、オリンピックで代表する国を選ぶことができます。

22歳を超えている場合は、オリンピック出場の要件にはないですが、日本の法律で重国籍が認められていないので、国籍選択の手続きをしないと日本国籍を失う可能性があるようです。
(ただし、日本の国籍を選択の宣言をした場合、日本以外の国籍の放棄に関しては「努力義務」となっているようです)

 

もし、もともと重国籍ではなかったり、22歳で国籍をすでに選択していたとしても、親の国籍国の国籍を取得することは、おそらくそんなに難しくないと思われるので、ハーフであれば重国籍でなかったとしても、両親どちらの国の代表としても出場できる可能性は高くあります。。

ましてや、世界の舞台で戦えるほどにスポーツに秀でた人が自国民の子どもであったら、国は積極的に国籍を与えて自国の代表になってもらうのではないでしょうか。特にそのスポーツが弱い国だったり、選手強化にお金をかけれないような国であればなおさらそうでしょう。

 

 

では、選択肢のあるハーフは両親のどちらの国の代表になることを選ぶのでしょうか?

1つは個人の資質でどちらの国だったら代表になり得る可能性があるかが決まると思います。おそらく中野亨道選手は日本代表に選ばれる可能性は低かったけれども、国際柔道連盟の定める出場条件はクリアすることはできるので、フィリピン代表を選んだのでしょう。

能力的にどちらの国の代表にもなり得る可能性があった場合は、次に考えるのは、どちらの国で出場した方がより価値が高く、条件も良いかということではないでしょうか。国によって選手への待遇や、結果を残した時の賞与なども異なると思うので、より条件の良い方を選ぶというのが自然なのではないでしょうか。

その他、個人的な思いもあるだろうけれど、おそらくこの二点はどの国を代表するかを決めるにあたって、大きく影響するでしょう。

 

また、こういうことを書くと、ハーフはオリンピックの代表になるにあたっての選択肢が多くて「ズルい」なんて言われてしまいそうですが。。。
スポーツの世界ではハーフに限らずとも、別の国に帰化して代表になるというようなことがどこの国にでもあるので、国籍なんてそんな程度(オリンピックに出場するという目的に対しての手段程度)のものなのかもしれません。

日本人だって、猫ひろしみたいに他国籍を取得してオリンピックに出てる人もいますからね。

 

ちなみに、日本の重国籍者は22歳で国籍の選択の必要がありますが、世界には重国籍が認められている国もあり、そういう国の選手たちは複数の国籍を保持したまま、オリンピックでは1つの代表国を決めていることになります。

 

オリンピック憲章(規則41 競技者の国籍 付属規則)
http://www.joc.or.jp/olympism/charter/pdf/olympiccharter2015.pdf

法務省「国籍選択について」
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html

 

ハーフはスポーツが得意なの?

 

「ハーフだと運動ができそう」ってよく思われます。
よくある「ハーフあるある」。

スポーツが得意なハーフはまだしも、苦手なハーフにとってはこのハーフに対するステレオタイプはけっこう迷惑なものです。
勝手に期待されて勝手にがっかりされることになるから。。。

一方スポーツが得意なハーフにとっても時に迷惑なステレオタイプでもあります。どんなに頑張っても「ハーフだから強いのは当然だよね」と、個人として成果を「ハーフであるため」と片付けられてしまいます。同じ努力をしてもなかなか日本人と同じように認めてもらえません。

 

実際には、ハーフにだってスポーツが得意な人も苦手な人もいます。
それはハーフでない日本人にスポーツが得意な人も苦手な人もいるのと同じ。

そして、日本人だけでなく、どこの国の人にも、どの人種、民族にもスポーツが得意な人も不得意な人もいます。

リオオリンピックでメダル獲得数1位のアメリカだって、肥満大国なぐらいだから、スポーツが苦手な人はいっぱいいます。

なので、外国の血が混ざっているからといってスポーツが得意な理由にはなりません。

もし生まれながらに身体能力に恵まれていたとしたら、それはハーフだからではなく、親からの遺伝なのではないでしょうか。たまたま運動能力に優れた家系であっただけ。

日本人だったら、身体能力の優れた家系に生まれても「そういう家系だから」ということは言われないのに、なぜかハーフが運動能力に秀でると「ハーフだから」、「外国人の親ゆずり」となってしまうんですよね。

また、たとえ、身体能力が優れていたとしても、それを伸ばす環境がそろっていなければ日本のトップレベルで活躍するほどの選手にはなれないと思います。

体操の内村航平選手やレスリングの吉田沙保里選手など、オリンピックに出場するような選手には親がジムを運営していたりして、小さい頃から能力を伸ばす環境が整っている人が多いですよね。そうでなかったとしても、良いコーチやチームが身近にいる環境だったり。

身体能力と環境、本人の努力、様々な要因ががそろって、オリンピックという国際舞台に立てるほどの人になれるはずです。たかだか片親が外国人だからなんて簡単な理由ではなれるわけはありません。

 

そして、今回、男子4×100mリレーの決勝の映像を見ていて思ったのが、ケンブリッジ飛鳥選手が他の日本人選手と並んでもあまり体格に差を感じないのに、ウサインボルト率いるジャマイカ勢と並ぶと小さく見えること。

この映像を見て、改めて「ハーフだから(ジャマイカルーツだから)速い」説は違うなと感じました。

ケンブリッジ飛鳥選手が早いのはジャマイカハーフだからと思っている人はゼヒこの体格の差を映像/写真で確認してみてください。

 


というわけで、ハーフとオリンピックについて、徒然と書いてみました。

来週にはいよいよパラリンピックが始まりますね。
パラリンピックは9月7日〜18日の開催です!

パラリンピックの女子水泳で出場する一ノ瀬メイ選手もハーフの選手ですね。イギリスと日本のハーフ。

彼女の戦いにも注目です!

えりざ

《ハーフコラム》ハーフとオリンピックの4つの疑問に答えます」への1件のフィードバック

コメントは受け付けていません。